カーボンニュートラル・脱炭素の自治体の取組事例
地域資源や廃棄物を活用した取組などを解説
しかし、「具体的にどのような取組が効果的なの?」「そもそも何から始めればいいのかわからない」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、地域資源や廃棄物などを活用し、カーボンニュートラル・脱炭素に取り組んでいる自治体の事例をご紹介します。
カーボンニュートラル・脱炭素とは
まずは、世界的に取組が進んでいるカーボンニュートラルと脱酸素について解説します。
カーボンニュートラルの定義
カーボンニュートラルとは、地域全体で排出される二酸化炭素(CO2)量を削減しつつ、残る排出量を吸収・相殺することで、実質ゼロにする状態を目指す取組です。
CO2削減の方策としては再生可能エネルギーの活用、電気自動車への移行、省エネ技術の導入など、吸収するための方策としては森林の保全・植林、二酸化炭素CO2回収・貯留技術(CCS)の活用などがあります。
自治体においては特に、再生可能エネルギーの導入や植林活動、省エネルギー化の推進がカーボンニュートラル実現の柱となります。
脱炭素の定義
脱炭素とは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を可能な限り抑える取組です。CO2の排出量自体を減らし、最終的にゼロにすることを目標としています。
自治体の場合、再生可能エネルギーへの転換、公共施設やインフラの省エネ化、焼却ゴミの削減 、交通の電動化などが 主な施策となります。脱炭素を目指すことは、温暖化の進行を抑えるだけでなく、エネルギーコストの削減や地域の経済発展にも寄与するため、地域社会の持続可能な発展にとって不可欠な施策です。
カーボンニュートラルと脱炭素の違い
脱炭素は排出そのものを抑えることに重点を置いている一方、カーボンニュートラルは排出量の削減に加え、残る排出量を吸収・相殺することで実質ゼロを目指すものという違いがあります。
自治体としては、まずは脱炭素に取り組み、排出量を可能な限り抑えつつ、植林や森林の整備、藻場の再生など地域の自然環境を活用して相殺を行います。それでも相殺しきれないCO2は、環境価値(クレジット)の取得により実質的にゼロにすることで、カーボンニュートラルを達成する流れが一般的です。
地域資源を活用した取組事例
自治体におけるカーボンニュートラル・脱炭素の取組にはさまざまな種類があります。
以下ではまず、地域資源を活用した取組事例をご紹介します。
岡山県真庭市|廃棄していた森林資源を活用したバイオマス発電によりCO2削減を実現
銘建工業株式会社、真庭市、真庭木材事業協同組合など10団体で構成される真庭バイオマス発電株式会社は、これまで山林に放置されていた枝葉や、有償処分されていた製材所から出る端材・樹皮といった未利用材を含めて燃料とし、発電に活用しています。
これにより地域資源を有効活用し、林業の活性化とエネルギー・経済の循環を実現しています。
兵庫県宍粟市|水力発電整備によりCO2の削減と農業者の収入増加を実現
兵庫県宍粟市では、地区住民有志が主体となり小水力発電事業を推進しており、年間で22万kWhの発電量を確保でき、CO2排出量の削減を実現しています。
小水力発電設備を導入し、異物除去スクリーンがついた取水口やバルブで水量が容易に調節できる分水槽を設置することで、農業用水路の管理が容易になるという効果も得られました。
また、農業用水路の管理のために必要になった草刈り作業を地元の農業者に依頼することで、収入増加にも寄与しています。
廃棄物を活用した取組事例
廃棄物を活用することでCO2削減を実現している事例もあります。
青森県東北町|ながいもの農業残渣によるバイオガス発電でCO2削減を実現
青森県東北町やJAゆうき青森他などで構成される合同会社農業連携BG投資組合1号は、ながいもの農業残渣を活用した小規模バイオガス発電施設を整備し、年間237tのCO2削減を実現しました。
JAゆうき青森の選果場では年間1,500t以上の農業残渣が発生し、毎年2,000万円超の費用を支払って外部処理を行ってきましたが、バイオガス発電システムにより農業残渣の資源化と処理費用削減が可能になっています。
福岡県みやま市|生ごみなどを活用したバイオガス発電でCO2削減を実現
福岡県みやま市は廃校のグラウンド跡地にメタン発酵施設を整備し、市内の家庭系・事業系生ごみ、し尿、浄化槽汚泥などを回収し、バイオガス発電の原料として活用しています。これにより、年間2,012tのCO2削減を実現しました。
またバイオマス発電を行う「バイオマスセンター『ルフラン』」では、建物内にシェアオフィス・研修室・学習室・チャレンジカフェ・食品加工室などが整備され、雇用を生むこともできています。
防災対策・レジリエンス強化も兼ねた取組事例
カーボンニュートラル・脱炭素だけでなく、防災対策・レジリエンス強化も兼ねた取組事例もあります。
島根県美郷町|電気自動車普及率の向上により、CO2削減と非常用電源確保を実現
島根県美郷町は、電気自動車(EV・PHV)の普及と災害時の非常用電源確保を目的として、事業者・個人の次世代自動車購入に補助金を交付しています。
燃費に優れたEVを活用することで、ガソリン車と比較して約10万円/年・台の燃料費削減が見込まれ、年間で22tのCO2排出量削減を実現しています。
また、災害時に非常用電源として活用することに同意する事業者・個人に対しては補助率を引き上げることで、非常用電源を確保し、地域の防災力向上につなげています。
福島県桑折町|役場庁舎に太陽光発電と蓄電池を設置し災害時を見据えた電源確保を実現
福島県桑折町は、災害対策本部となる町役場庁舎に太陽光発電設備および蓄電池を整備しました。
太陽光発電の設置により、年間で11.26tのCO2削減を実現しています。
太陽光発電と蓄電池の整備により、町役場へ避難してきた住民の受け入れに必要な照明の確保や、携帯電話の充電スポットを提供することも可能になりました。
観光事業と連携した取組事例
カーボンニュートラル・脱炭素と観光事業との連携による取組事例もあります。
福岡市|CO2排出量の少ない観光プランの考案・都市型サステナブルツーリズムの推進
福岡市は都心部と自然との近接性を活かし、農業体験やE-BIKEによる移動などを組み合わせたモデルツアーの実施や、宿泊施設などのCO2排出量の可視化や削減に向けたアドバイスなど、観光事業におけるCO2排出量削減に取り組んできました。また、CO2排出量削減に取り組む事業者やその取組みについて、HPやSNSなどでの発信を進めています。
具体的には、「里山における自然を活かした農業・ものづくり体験」などのモデルツアーや、レンタサイクルなどを活用した環境にやさしい観光プランの考案など、観光事業におけるCO2排出量削減に取り組んでいます。
またエコツーリズムを促進する取組として、CO2排出量削減に取り組む事業者の発信や、サステナブルに取り組む事業者同士のマッチングなども進めています。
自治体は何からはじめるべきか
ご紹介したように、カーボンニュートラル・脱炭素には多様な取組の方法がありますが、「何から始めればよいかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
最後に、自治体がカーボンニュートラル・脱炭素に向けて始めるべきことについて解説します。
まずは現状のCO2排出量を正確に把握すること
自治体が脱炭素・カーボンニュートラルを目指す際、まず重要なのは、自らのCO2排出量を正確に把握することです。具体的な削減目標を設定し、効果的な取組を進めるためには、排出量の「見える化」が欠かせないからです。
排出源がどの部門や施設に多いのか、また、それぞれの活動が地域の排出量にどのように影響しているのかを定量的に把握することで、より効率的かつ的確な削減策を講じることが可能になります。
どのような取組を行うにしても、脱炭素・カーボンニュートラルを効果的に進めるためには、まずCO2排出量を算定するツールの導入が必要になります。
自治体向けのCO2排出量算定ツールはどのように選ぶべきか
会計データの勘定科目を活用して排出量を算出できるツールであれば、煩雑なデータ収集作業を省き、排出量を簡便に可視化できます。
このような機能を備えたツールであれば、既存の会計データを活用し、自治体の財務データと連動して排出量を把握することが可能であるため、計算作業の手間を大幅に軽減できます。
また、専門知識を持たない職員でも使用できるシンプルな仕様のツールを選ぶことも重要です。
操作が直感的でわかりやすいものを選ぶことで、職員全体での導入がスムーズになり、日常的なデータ入力や更新作業も容易になります。
東武トップツアーズでは、CO2排出量を算定・可視化できるシステムを提供しています。
CO2排出量の可視化ツールをご検討中の自治体ご担当者さまはぜひお問合せください。