自治体などで生成AI導入を推進するには? 生成AIの種類・事例・導入手順を解説

本記事では、自治体での活用が期待される生成AIの種類や導入事例、導入の手順を解説します。
主な生成AIの種類
生成AIは、テキストや画像、音声などの新たなコンテンツを自動で生成してくれる技術のことです。
用途によってさまざまな種類があります。
テキスト生成AI
自然言語を使って文章や対話を生成するAIです。ユーザーが入力した内容に基づき、適切な文章を自動で作成します。柔軟に文章を生成でき、内容に応じて構成や文体を調整することが可能です。
メールの文案、ブログ記事、SNS投稿文、翻訳、要約など、多様なテキストの作成に活用されています。
画像生成AI
テキストや既存の画像を基に新しい画像を生成するAIです。入力された内容に合わせて、オリジナルのビジュアルを作成できます。生成される画像は、スタイルやテーマに合わせて高い精度で表現されます。
イラストやロゴの作成、ウェブサイトや広告のデザイン、画像の修正・加工などの用途で活用されています。
音声生成AI
テキストや既存の音声を元に、新しい音声を生成するAIです。テキストを音声に変換することができ、ナレーションやアナウンスの音声などを生成することが可能です。
テキストを基に音声を生成するだけでなく、ある人の声を別人の声に変換するものや、音楽の制作や編曲などができるツールもあります。
自治体で活用事例が多い用途とは
企画書作成や議事録の要約などテキスト生成AIが多い
総務省の調査によると、自治体での⽣成AIの具体的な活⽤事例は、「あいさつ⽂案の作成」や「議事録の要約」、「企画書案の作成」などがメインとなっています。
その他にもメール文案の作成や、回答案の作成など、「テキスト生成AI」の活用が多い状況です。こうした文書作成の業務において業務時間削減の効果が報告されています。
参照:総務省情報流通⾏政局地域通信振興課「地⽅⾃治体におけるAI・RPAの実証実験・導⼊状況等調査」(令和5年12⽉31⽇現在)
自治体に適しているテキスト生成AIとは?
テキスト生成AIには複数のタイプがあり、業務内容や用途に適した生成AIを導入することが重要です。
テキスト生成AIは「プロンプトベース型」「フォームベース型」に大別できる
テキスト生成AIは、「プロンプトベース型」と「フォームベース型」の2種類に分けられます。
柔軟性が求められる場面ではプロンプトベース型が適しており、使いやすさが求められる場面や、利用用途が限定的な場合はフォームベース型が適しています。
プロンプトベース型
ユーザーが自由形式のテキスト(プロンプト)を入力し、AIがそれに基づいて回答する形式です。多様なプロンプトに対応でき、高い柔軟性がある反面、利用者側が適切な質問をしなければ適切な回答を得にくい点がデメリットになります。
フォームベース型
あらかじめ定められた入力項目に沿って情報を入力する形式です。様々な使用用途に応じて柔軟な回答を得ることが難しい面がありますが、用途が予め定まっている場合は利用しやすい点がメリットです。
「プロンプトベース型」が十分に活用されないケースとは
ある自治体では、市民向けに導入したプロンプトベース型の生成AIが期待どおりに活用されていない状況がありました。市民は多くの場合、単語のみを入力する傾向があり、AI側が意図を正確に汲み取れなかったのです。その結果、回答が的外れになり、利用者の満足度が下がってしまう可能性が指摘されています。
プロンプトベース型は、入力内容を吟味・工夫する必要があるため、市民や自治体職員のように多忙な利用者にとっては負担となる場合があります。期待した効果を得るためには、入力方法について十分な事前説明やヒントを提示する必要があります。
自治体や市民利用には「フォームベース型」が適する場合が多い
自治体職員が生成AIを業務に使う場合、必要なアウトプットがある程度決まっていることが一般的です。そのため、自由記述で柔軟性を追求するプロンプトベース型よりも、特定の入力項目に沿うことで確実に所定の文書を生成できるフォームベース型が有用です。市民向けの利用シーンでも、提示された欄に必要な言葉や情報を入力するだけで所望の結果を得られるため、手軽さと分かりやすさが向上します。
このように、自治体では高機能であることよりも直感的な利用が重視される場面が多く、必要な情報を入力するだけで所定の出力が得られるフォームベース型が適していると考えられます。
「プロンプトベース型」を有効活用する工夫とは
プロンプトベース型が効果を発揮するためには、利用者が「何をどのように入力すればよいか」を理解できる仕組みが必要です。たとえば、利用者が単語のみを入力した場合でも、AI側がその意図を推測して関連する質問例やガイドメッセージを提示することで、より明確な入力を促すことが可能となります。
このようなサポートを通じて、利用者が適切な問いかけを行いやすくなり、回答の精度向上と満足度の向上が期待できます。結果的に、プロンプトベース型による利用離れを防ぐことにもつながるでしょう。
自治体でのテキスト生成AI導入事例
チャットボットにより職員の問合せ時間を削減(愛知県内39市町村)
愛知県では、AIを活用した総合案内サービスを導入し、県内39市町村で活用されています。
この取り組みでは、市民からの生活に関する問い合わせ(引越し、妊娠、出産など)に対応するため、AIチャットボットを活用し、職員の負担軽減と市民サービスの向上を目指しました。
導入の背景には、業務効率化と共同利用の要望があり、「あいちAI・ロボティクス連携共同研究会」で検討された結果、安価で安定的なサービスを提供する事業者が選定されました。
導入成果として、AIによる問い合わせ対応により職員の対応時間が削減され、市民の利便性も向上しました。今後は、問い合わせ対応の精度向上やデータの追加学習が課題となりますが、引き続きサービスの利用拡大が期待されています。
リアルタイム議事録により文字起こし時間を削減(青森県)
青森県では、会議の文字起こし業務を効率化するため、AIリアルタイム議事録サービスを導入しました。
導入の背景には、限られた職員数と予算の中で、議事録作成にかかる膨大な時間を短縮したいという課題がありました。
AIを活用し、会議中の音声をリアルタイムでテキスト化することで、議事録作成にかかる作業時間を大幅に削減する効果を得られました。
今後は、議事録作成にとどまらず、聴覚障害者支援や外国語翻訳など、県民サービスの向上にも活用が広がる予定です。また、導入により職員の負担が軽減され、業務の効率化が進むとともに、データのセキュリティも確保されています。
チャットボットで観光案内(山口県美祢市)
山口県美祢市は、観光案内を目的とした生成AI「ミネドン」のリリースを発表しました。「ミネドン」は、美祢市の観光地、特産品、宿泊施設などに関する情報を学習し、観光客に有益な情報を提供するサービスです。
スマートフォンで利用でき、文字だけでなく音声での会話も可能です。観光地の情報やおすすめスポット、グルメ情報などを尋ねることもできます。この取り組みにより、観光客はより便利で充実した旅行を楽しむことができます。
メール文案作成・校正・レポート分析など頻度の高い作業を効率化する機能を網羅(埼玉県川越市)
埼玉県川越市では、行政DX専用の生成AI「マサルくん」を導入しています。
「マサルくん」は、メール文案作成・校正・レポート分析など自治体で行われる頻度の高い作業を効率化する機能を網羅した生成AIサービスです。
機能ごとに予め入力フォームが準備されているため、面倒なプロンプト入力を行うことなく求める回答を得ることができます。
主に以下の機能を利用できます。
・メール文案作成
・文章校正
・政策レポートや申請書のたたき台作成
・レポート分析
「マサルくん」は以下よりお試しいただけます。
https://digital-supporter.net/masaru/index.htm
自治体での生成AI導入の流れ
生成AI活用目的の明確化
最初に、生成AI導入の目的を明確にする必要があります。地域特性や抱える課題に基づき、どのような課題を解決したいのか、またどのような成果を目指すのかを整理することが重要です。具体的な目的を設定することで、導入後の効果測定や計画の見直しが容易になります。
パートナー企業の選定
導入にあたっては、生成AIの活用に精通した企業の支援を受けることが重要です。信頼性やデータのセキュリティ、費用対効果などを考慮し、信頼できるパートナーを選定する必要があります。
また、導入目的や方針が十分に整理されていない状態で直接システム開発企業に依頼すると、目的から逸脱した結果になるおそれがあります。そのため、導入目的や活用方針の整理から支援を行う企業に相談することが成功の鍵となります。
生成AIの導入は東武トップツアーズにご相談ください
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